クロムめっきとロールナビ

Chrome Plating and Roll NAVI

めっきの基礎知識

めっきの技術用語

用語一覧(めっき工程)

めっき操作・浴管理に関する用語

めっきが最適となる浴組成の薬品をめっき槽に投入し、めっき液を調合することです。

電流密度

電極の単位面積当たりに流す電流の大きさを表します。めっきでは、1平方デシメートル(1dm2=10cm×10cm=100cm2)当たりの電流密度を単位(A/dm2)に用いることが一般的です。

電流効率

流した電流と時間の積である電気量のうち、実際に金属の析出や溶解に用いられた電気量の占める割合を示す値です。これは実測で求められ、計算式:電流効率(%)=(実際の金属の析出あるいは溶解量)/(理論的な金属の析出あるいは溶解量)です。

陽極反応

電気分解において、陽極(アノード)で起こる酸化反応、水分解による酸素発生、金属の溶解等の反応のことです。

陰極反応

電気分解において、陰極(カソード)で起こる還元反応、水分解による水素発生、金属の析出等の反応のことです。

電流濃度

電解液の単位容積当たりに流れた電流の大きさのことで、A/L等の単位で表されます。めっき液に大電流を流すことがありますが、電流が大きいと発熱が大きくなり液温が上昇してしまいます。このため、適切な電流濃度内でめっきを行うとともに、温度上昇が大きくなる場合には液の冷却を行います。

めっき皮膜のつき方・均一性に関する用語

電流分布

電解槽内あるいは電極に電流が流れた強さの分布のことです。電気めっきでは、槽内での品物と陽極の位置関係で電流の流れ方が変わり、品物の各位置の電流密度が変化し膜厚が変わります。電流分布は、めっき槽内の幾何学的な配置から求められる一時電流分布と電極反応(過電圧、攪拌など)に関連する二次電流分布などがあります。

電解を行うと電極表面では金属イオンが還元消費され、その濃度が低下します。すると、電極面から溶液側に向かって濃度が傾斜した層が形成され、これを拡散層と呼びます。層の厚みは、イオンの移動度、液濃度、温度や攪拌などによって変化しますが、数十~数百μmオーダーです。

限界電流密度

電解時に電圧を上げていくと、電流値は頭打ちになっていきます。この時の電流密度が、限界電流密度です。これは、電極表面への金属イオン等の補給(拡散)が間に合わなくなり、副反応の水素発生が同時に起こるためです。限界電流密度条件下でめっきをすると、界面のpHが上昇して金属水酸化物が沈着し、それを巻き込んだ皮膜(やけ・異常析出など)になります。

陽極酸化処理

陽極で行う電気化学的な酸化処理のことです。クロムめっきでは、めっき時に品物を短時間、陽極で表面エッチングして加工変質層や酸化皮膜を取り除き、めっきの密着性を確保します。

被覆力(カバーリングパワー・つきまわり)

被覆力とは、一定条件下で初期に電気めっきを析出させ得るめっき液の能力のことです。めっきによっては、水素発生が優勢でめっきが析出しない低電流密度な領域ができることがあります(クロムめっき、ジンケート浴など)。被覆力が悪い浴では、無めっき(未析出)となるため、めっき開始時に大きな電流を流し(ストライクめっき)、低電流密度領域にめっきを析出させる対策を採ることがあります。

ストライクめっき

めっきの密着性改善、被覆力を向上させてめっきの未析出を防ぐ目的として、特別な作業条件または浴組成で短時間のめっきを処理することです。

均一電着性(スローイングパワー)

めっきの膜厚が、品物全体でどれだけ均一にめっきできるかを示す能力のことです。これは、めっき浴の種類や電着条件等により異なります。クロムめっき浴の均一電着性はあまり良くなく、シアン浴は良好になる傾向があります。

レベリング(平滑化作用)

素地の微視的な凹凸や研磨の条痕などを平滑化にするめっき浴の能力のことです。この作用をもたらす添加剤(光沢剤)をレベラーと呼びます。めっき時には、それらが凸部や凹部に吸着し、めっきの成長が抑制あるいは促進されて表面は平滑化されます。

電着応力(めっきの内部応力)

めっきが成長していく折に、皮膜内に蓄積される応力のことです。電着応力には、素地に対して内側方向に曲げようとする引張応力と逆に押しつぶす方向にかかる圧縮応力があります。

めっき欠陥に関する用語

膜厚過多

目標とする膜厚より大幅にめっきが厚いあるいはその領域のことです。

膜厚不足

目標とする膜厚より大幅にめっきが薄いあるいはその領域のことです。

めっきが均一に析出せず、品物周りで膜厚に偏りが生じることです。ロール等へ厚いめっきを処理する場合、陽極配置に違いがあると円周周りで偏肉が生じます。

バイポーラ電極

陽極と陰極の間に電源に接続されていない導体があると、電解中に導体内で分極し、別々の極性極になる現象のことです。めっき槽内で接点が確保されていない品物上では、陽極側に近い領域が陰極となり、めっきの析出が起こります。一方、陰極側に近い領域は陽極となり素地溶解が起こり、めっき不良が発生します。

めっき皮膜の欠陥に関する用語

めっき皮膜に形成された巨視的な穴で、素地まで貫通していなものを言います。

ピンホール

素地まで貫通しているめっき皮膜の細孔のことです。

素地とめっき皮膜の密着性が悪く、微細な剥離やふくれなどを伴った状態のことです。

品物の角部など、電流が集中したところでこぶ状、あるいは樹枝状にめっきが析出した状態のことです。

めっき皮膜の一部が素地と密着せずに膨れた状態のことです。

割れ(マクロクラック)

めっき皮膜の応力などによって、めっきが目視で確認できる程度に割れた状態のことです。品物では、後加工する際の割れ、熱処理した際のめっき皮膜と素地の熱膨張差によるヒート割れなども起こることがあります。

めっき皮膜の一部が素地から剥がれた状態のことです。

ざらつき

めっき浴中の固体浮遊物などがめっき層の中に入り込んで生じた小突起のことです。

光沢めっきにおいて、部分的または全体で光沢が乏しくなった状態のことです。

汚れが染み状に付着した状態のことです。めっき液面に浮遊した汚れの付着、水洗後の乾燥のムラ(ウォーターマーク)があります。

焦げ(やけ)

過大な電流密度で生じる、粗くて焦げたようなめっき皮膜のことです。

めっき皮膜に形成される小さな突起のことです。

異物付着

めっき表面に異物が付着した状態のことです。

無めっき

めっきが析出していない領域のことです。特に、低電流密度領域で発生します。

めっき面が本来の色調を失った状態のことです。めっき皮膜の未析出、腐食、異物付着などによって起こります。