めっき不良
硬質クロムめっきを処理する際に発生する不良にはさまざまなものがあります。
めっき不良は、めっき前の素地の状態、前処理、めっき浴組成、めっき条件、治具の位置やマスキング剤等のさまざまな要因で発生します。めっき処理した製品は多くの分野で使用されており、求められる品質もますます高くなってきています。めっき不良の代表的なものを表にまとめます。
めっき不良の種類
不良用語 | 状態 | 断面イメージ |
---|---|---|
ふくれ | めっき皮膜の一部が素地と 密着がとれずに膨れた状態 | |
剥離 | めっき層の一部が素地から剥がれた状態 | |
ピット | めっき皮膜に形成された巨視的な 素地まで貫通していない穴 | |
ピンホール | 素地まで達する貫通した細孔 | |
割れ(マクロクラック) | めっき皮膜が無秩序に割れた状態 | |
無めっき | めっきが析出していない状態 低電流密度部に生じやすい | |
異物付着 | めっき表面に異物が付着した状態 | |
ぶつ | めっき皮膜に形成される小さな突起 | |
ざらつき | めっき浴中の固体浮遊物がめっき層の中に 入り込んで生じた小突起 | |
焦げ(やけ) | 粗いめっきで過大な電流密度の場合に生じる 焦げたような表面状態 | |
くもり | 光沢めっきにおいて部分的または 全体で光沢が乏しい状態 | |
しみ | 汚れが染み状に付着した状態 |
1.ふくれ
めっき皮膜の一部が素地と密着がとれずにふくれた状態のことで、密着不良とも呼ばれます。ふくれをレーザー顕微鏡で観察すると凸になっています。
硬質クロムめっきのふくれ
ふくれ部の断面
ふくれ不良の原因
めっき前の脱脂不良、脱脂後の水洗不足、マスキング剤の付着等
2.剥離
めっきの一部が完全に素地から剥がれた状態のことを言います。
めっき剥離
剥がれ不良の原因
めっき前の脱脂不良、脱脂後の水洗不足、マスキング剤の付着、密着確保のための前処理不足等
3.ピット・ピンホール
めっき表面に形成された穴を目視または顕微鏡で観察しても、素地まで貫通している孔かどうかの判断はつきません。
めっきに形成された孔の顕微鏡像
ピット・ピンホール不良の原因
めっき前加工の不備、素地の材料欠陥、サンドブラスト等の異物付着
めっき中の水素ガス発生の起点、素地の腐食、素地の熱処理割れ等
4.割れ(マクロクラック)
硬質クロムめっきは応力を開放してクラックを形成しながら成長するので、マイクロなクラックを有しています。一方、めっき不良の割れは、マクロなクラックで目視で確認できるものを言います。
めっきに生じたマクロクラック
割れ不良の原因
めっき後の仕上げ加工で負荷のかけすぎ、熱処理等
5.無めっき
めっきが部分的に析出していない状態で、低電流密度部分に生じることが多いです。
無めっきのロール軸の根本
無めっき不良の原因
接点不良、電気不足、前処理不備等
6.異物付着
めっきしている間に異物が付着し、異物を取り込んでめっきが成長した状態を言います。
異物を取り込んだめっき
異物付着不良の原因
めっき液中のゴミ浮遊、素地加工した切子や鉄粉等
7.ぶつ
めっき皮膜に形成される小さな突起をぶつと言います。素地の微小な凹凸箇所や素地との界面に異物が混入した上にめっきが成長するとぶつが発生します。
素地に凹凸がある場合
素地に凹凸があり、凸の部分にぶつが形成されたパターンです。
表面観察
断面観察
異物が混入した場合
素地とめっき皮膜の界面に異物が存在し、ぶつが形成されたパターンです。
表面観察
断面観察
異物の元素マッピング像(異物はアルミニウムとチタン)
8.しみ
めっき皮膜に汚れが染み状に付着したもので、梨地表面に多く見られます。
梨地ロールのしみ
しみ不良の原因
脱脂不足、脱脂後の水洗不足、めっき後の水洗不足等