めっきの析出理論
電気めっきにおいて、流した電気量は析出あるいは溶解した金属の量と一定の関係があります。このため、電気量を制御することで金属の析出あるいは溶解量をコントロールできます。また、電流密度を調整することで、めっき速度も変えることができます。
1.ファラデーの法則
電気分解によって物質の析出または溶解が起こる場合、析出または溶解する物質の量と電気量にはファラデーの法則が成立します。
ファラデーの法則
第1法則:析出または溶解する物質の量は、流した電気量に比例します。
第2法則:電気量が同一の場合、析出または溶解する物質の量はその物質の化学等量に比例します。
電気めっきで析出する金属の量は、ファラデーの第2法則から次式で求められます。
理論めっき析出量=k×I×t
k:析出する金属の電気化学等量(g/C)、I:電解電流(A)、t:電解時間(s)
実際のめっき反応では、水素発生などの副反応が起こるため、めっきの析出量は理論値より低くなります。これを補正するのが電流効率です。各種めっきの電流効率は、実際に析出しためっき皮膜の重量とファラデーの法則から求めた理論析出量より下記式で算出できます。
めっきの電流効率(%)=実際に析出した金属量(g)/理論析出量(g)
めっきの種類 | 電流効率(%) |
---|---|
クロムめっき | 12~20 |
鉄めっき | 90~95 |
ニッケルめっき | 94~98 |
酸性銅めっき | 95~99 |
2.イオン化傾向と酸化還元電位
酸性溶液(pH=0)において、金属が溶解してイオンになりやすい順に並べたものがイオン化傾向です。イオン化傾向を水素発生の電位を基準として、数値で示したものが酸化還元電位です。金属イオンが金属に還元されやすければ貴な電位(+)を示し、還元されにくければ卑な電位(-)を示します。
電極 | 電位(V) |
---|---|
Li/Li+ | ー3.045 |
Na/Na+ | ー2.71 |
Ti/Ti2+ | ー1.75 |
Al/Al3+ | ー1.66 |
Zn/Zn2+ | ー0.763 |
Cr/Cr3+ | ー0.71 |
Fe/Fe2+ | ー0.44 |
Co/Co2+ | ー0.27 |
Ni/Ni2+ | ー0.23 |
Pb/Pb2+ | ー0.126 |
H2/2H+ | 0.00 |
Cu/Cu2+ | +0.34 |
Ag/Ag+ | +0.799 |
Pt/Pt2+ | +1.2 |
Au/Au+ | +1.7 |
酸化還元電位によると水素(0V)より貴な電位を示す銅(Cu)から金(Au)はめっきが可能で、水素より卑な電位を示すリチウム(Li)から鉛(Pb)は水素発生反応が優先されると予想できます。しかし、実際は鉛(Pb)から亜鉛(Zn)間の金属でもめっきが可能です。この理由は、各金属において水素が発生する電圧が違うため(水素過電圧)で、これによって水素発生が抑えられてめっきが析出するからです。