クロムめっきの前後では、基本的に機械加工を行います。
こうした加工を行わないと、希望の精度や表面粗さが得られないばかりでなく、めっきが付かないという場合もあります。めっきでは、めっき工程だけでなくその前後の工程も大変重要になります。
表1 クロムめっき前後の代表的な工程とその目的
| 工程 | 前加工での目的 | 後加工での目的 |
|---|---|---|
| ベーキング | 加工歪の除去 | 水素脆化の予防 |
| グラインダー研磨 | 寸法精度 | 同左 |
| バフ研磨 | 表面粗さ、(寸法精度) | 同左 |
| 鏡面研磨 | - | 鏡面性、(寸法精度) |
| ブラスト | 粗面化、密着向上 | 粗面化 |
ベーキング
めっき前のベーキングは、母材を製造する際の機械加工や溶接で蓄積した応力を除去するために行います。
めっき後のベーキングは水素脆性除去のために行います。
クロムめっきの際には多量の水素がクロムと同時に析出するため、この水素が鋼材の中に入り込んでしまいます。特に高強度の材料は取り込まれた水素によって脆くなってしまいまうため、ベーキングを行う必要があります。
処理条件はJISに定められており、どちらの目的でも190℃~220℃でベーキングを行います。
グラインダー研磨
厳しい寸法公差や真円・円筒・振れが必要な場合に行います。
バフ研磨や鏡面研磨でもある程度は真円・円筒度の調整ができますが、精密な調整や振れの制御はできません。グラインダー研削では砥石を押し当てた分だけ削れるのに対し、バフ研磨では品物の形状に合わせて砥石が動くためです。
クロムめっきは均一電着性が悪いため、特にめっき後、めっき前後にグラインダー研削を行います。
バフ研磨
めっき前のバフ研磨によって、希望の表面性状とともに密着の良いめっきを得られます。
母材表面に錆や汚れがあると、密着せずビリビリのめっきになってしまいます。また、めっきは母材の形状を拾うため、スクラッチや穴がめっき後も残る場合があります。さらに、めっきは突出部分につきやすいため、表面がとがっているとブツ(異常析出)や欠けなどの不良につながります。
めっき前に清浄で平滑な面を作ることが重要になります。
図1 めっきのブツ
めっき直後のクロムめっきはざらついた白っぽい表面をしています。(白上げめっき)みなさんが想像するぴかっとしたクロムめっきは、これをバフで除去して平滑な面としたものになります。
鏡面研磨
めっき後0.1S以下の鏡面性が求められる場合に行います。
一方で、バフではおおよそ0.4~0.8S程度の準鏡面までが得られます。
めっき前に鏡面研磨を行うことは多くありません。
ブラスト
ブラストも、バフ研磨と同様に清浄な面が得られます。さらに凹凸によるアンカー効果で母材とめっき間の密着力を向上させる効果があります。
また、梨地の面がほしい場合もブラストを打ちます。
先述のようにめっきは母材の形状を拾うため、梨地面にめっきすると梨地状のめっきが得られます。ブラストのタイミング(めっき前 / めっき後 / めっき前後両方)によって得られる梨地目が変わるため、希望に合わせて行います。
梨地の表面だけを研磨すると、セミマットやミラーポケットになります。