ロール製作
設計・発注のポイント
ロール製作の際は、発注側と製作側で詳細な打ち合わせが必要です。
1.ロールの使用条件について
項目 | 内容 | 注意点 |
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ロールサイズ | ロールの面長、直径、軸の長さ等 | 加工機によってサイズに制限があります。公差や精度等についても打合せが必要です。 |
ロール構造 | 単管水冷式、単管ガイド、2重管、3重管等 | 冷却方法でロール内部の構造が異なります。 |
使用用途 | 1.樹脂成形 2.ラミネート 3.コーティング 4.搬送 | 成形、冷却、加熱、圧延、しわ伸ばし、延伸、搬送などの用途について可能な限り開示下さい。用途に応じて材料の選定や母材の焼入れ、表面処理を検討します。 |
成形製品の詳細 | 樹脂の種類、柄、風合い等 | 樹脂の成分によっては材質や表面処理を見直す必要があります。柄によっては加工不可の場合があります。 |
使用温度 | ロール自体を加温する場合や樹脂の成形温度等 | 温度によっては材質や構造等の選定が必要です。 |
熱媒体 | 油、水、温水、蒸気 | 通水使用の場合は、流路への防錆処理(無電解ニッケルめっき)を推奨しています。 |
ロール回転数 | 比較的高速で回転させて使用するロールに関しては動バランス、動振れを考慮する必要があります。 |
2.ロールの設計について
項目 | 内容 | 注意点 |
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図面の有無 | ロール図面の有無 | 図面が無い場合は、現物を採寸する必要があり、内部構造について打合せが必要です。 |
材質 | ロール各部の材質 (外筒、内筒、軸等) | 物理的強度、熱的強度、耐食性、焼入れ性など使用条件に応じた材料を選定・提案します。 |
外筒パイプ | シームレス、巻パイプ、鍛造、丸棒くり抜き | 規格にあるシームレスパイプが最も安価ですが、大きさや厚み、用途によってその他の材料を選定する必要があります。 |
外筒の大きさ 厚み | ロール径と厚みの選定 | 冷却・加熱効率や強度を考慮して定める必要があります。 |
熱処理 | 使用用途の確認 | 熱処理の種類によって材料のサイズ等の選定が必要になります。また、冷却、加熱の熱媒体での熱歪みを考慮し、歪みの発生を抑える必要があります。なお、材料強度調整などを目的として熱処理を選定します。 |
焼入れ | 焼入れの有無と焼入れ硬度 | 材料の肉厚が薄いと歪みが発生するので、ある程度の肉厚が必要となります。形状によっては曲がりが発生することがあるので、焼入れ前の寸法の打合せが必要です。強度が要求される鋼板や硬度を有した樹脂を成形する圧延ロールの胴部や軸受部は硬化目的の焼入れをします。 |
熱媒体の 入口・出口 | 有無、位置の詳細 | 熱媒体の入口と出口の位置によってロール構造が決まります。また、ロータリージョイントの種類によって、取り付け方法が異なるため確認が必要です。 |
ロールの回転方向 | 駆動側から見ての左右 | 内部構造やネジ方向を回転方向に合わせて設計することが重要です。 |
フィン | 有無、スパイラル構造やペリフェリ構造 | 熱分布の管理レベルに応じて内部構造が異なります。 |
通水管の はまり込み | 有無 | 通水管のはまり込みはサイフォン管の種類によりますが、理想はOリングタイプのサイフォン管でロール側はフラットの穴加工が望ましいです。サイフォン管がネジ式のタイプはロール側もPTネジを加工するためロールの振れが発生する可能性があります。 |
3.寸法公差の設定
項目 | 内容 | 注意点 |
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外径公差 | 一般公差または指定公差 | 厳しく公差を指定するとコストアップだけでなく、加工の可否にも繋がるため、無理のない設計が重要です。 |
軸公差 | h公差、その他 | |
穴公差 | h公差、その他 | |
キー溝 | キー溝の有無と公差について (マイナス公差または一般公差) | 公差の指示は忘れがちになりやすい項目です。 |
4.表面処理について
項目 | 内容 | 注意点 |
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表面仕上げ | バフ・鏡面・梨地等 | お客様が成形する製品に合わせて作り込む必要があり、鏡面性を上げると離型性が悪くなったりと注意が必要です。梨地ロールに関しては、お客様で成形した製品をサンプルとしてロール表面を決めることもありますが、ロール製作初期と光沢度等が変化していることがあるので注意が必要です。可能であればロールの使用外箇所の粗さを調査することが望ましいです。 |
めっき膜厚 | 各種めっきの膜厚 | 使用用途や最終精度など仕様に合わせた最適な膜厚を提案します。なお、めっきを厚くすると熱割れを起こす危険性があるので注意が必要です。成形機メーカーはめっき膜厚が100μm以下の仕様が一般的です。 |
表面粗さ | JIS82、JIS94、JIS01やRa、Ry、Rz等の値 | 粗く設定すると製品へ悪影響が出たり、細かく設定すると高価になるため、適切な値を定めることが重要です。 |
精度 | 真円度、円筒度、振れ | 過度なスペックは加工難易度が上がり、コストアップに繋がるため予算に応じた設計が必要です。 |
軸めっき | 有無 | めっき面積増大はコストアップに繋がるため、必要箇所に絞っためっき指示を推奨します。 |
内部流路の防錆 | 有無 | 一般的には無電解ニッケルめっきを採用しており、めっき膜厚によって価格が変わります。 |
ベーキング | 有無、指定温度 | 脱水素、応力除去、熱歪み防止を目的として行います。使用温度にてベーキングすることが望ましいです。また、ベーキングする場合は熱膨張によりロールの変形など発生する可能性があるため、エアー抜きが必要となります。 |