【クロムめっきはオールラウンダー】
クロムめっきは硬さや滑り性、コスト等のバランスがとれた処理です。そのため工具やロール等の工業用途から、装飾の目的で自動車やカメラ、日用品など幅広く用いられています。
【クロムめっきのプロフィール】
他の表面処理方法と比較すると、クロムめっきの特徴がより際立ちます。
ライバルである無電解Niめっきや溶射、気相蒸着(PVD、CVD)、窒化等の硬さが得られる処理にフォーカスして、クロムめっきとの比較を行いました。
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硬質Crめっき |
他の方法と比較 |
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処理温度 |
30~60℃ |
PVDやCVD、窒化等では200℃~1500℃に達することも 熱処理と比較するとかなりの低温処理であり、寸法変化が小さい |
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耐熱性 |
~400℃ |
他の方法よりも劣る。DLCより優れる |
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膜厚 |
30~200 µm (硬質) ~2 µm (装飾) |
厚膜化が可能であり、衝撃や圧力への耐性を付与できる 無電解Niめっきでは30µm、気相法では10µm以下が限度 |
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硬さ |
HV 800~1000 |
硬く、耐摩耗性があり傷つきにくい CVDやPVDと比較すると劣るが、後加工がしやすい |
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均一膜厚 寸法精度/複雑形状 |
△ |
PVDの苦手とする、傘のような形状でもめっきできる。 一方で、均一厚を得るにはテクニックが必要。厚膜なほどばらつき大。 薄膜処理や、無電解めっきのほうが向いている場面も多々あり |
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加工可能材料 |
鉄鋼、鋳鉄、銅、 |
導電性のある材料のみ 溶射の方が幅広い 無電解Niめっきは導電性がなくてもめっきできる |
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コスト |
◎ |
真空や高温、レアメタルが不要で、めっき液の管理が容易なため |
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加工可能サイズ |
数mm~数m |
小型品から大型品まで幅広い 溶射は小型品が苦手だが、現地施工が可能な場合や、大きさに制限がない場合もある。PVDは大型品が苦手 |
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苦手な薬剤 |
塩酸、希硫酸、フッ酸、クロム酸、クエン酸 塩素 等 |
酸に弱いが、アルカリへの耐性を持つ 硫黄への耐性をもつためゴム金型に使用できる |
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耐食性 |
△ |
正常な皮膜でも微細な割れ(クラック)を持っているため、ここから腐食因子が侵入することがある |
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再加工 |
容易 |
窒化のように、母材そのものに手を加える処理ではないため、皮膜をはがして再加工できる 気相蒸着と比較して皮膜をはがすのも容易 |