クロムめっきとロールナビ

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コラム

Column

クロムめっき廃液の処理

クロムめっき液には強い毒性を持つ6価クロム(Cr6+)が多量に含まれます。当然ですが、めっき廃液をそのまま下水に放流することはできません。下水に含まれる6価クロムの量は0.02 mg/l以下となるよう定められており、捨てる前にCr6+を除去する必要があります。

【6価クロムの処理方法】

 クロムを水に溶けているイオンの状態から、固体の水酸化物に変化させ、ろ過で分離します。化学の授業で実験を行ったことはないでしょうか?

① Cr6+の還元
 Cr6+のままでは水酸化物を作らないため、還元剤を用いてCr3+に変える必要があります。還元剤としては亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)などの亜硫酸塩を用いることが多いです。この反応は酸性下でよく進むため、硫酸(H2SO4)も加えて促進します。

② pHを調整し沈殿を作る
 ここに、水酸化ナトリウム(NaOH)を入れて、pH9~10に調整します。すると、Cr3+が水に溶けない水酸化物Cr(OH) 3として沈殿します。ここで鉄や亜鉛など他の重金属も水酸化物として沈殿し、分離することができます。

③ 凝集剤で集める
 沈殿といっても微細な粉末状・綿状で液中に分散しているので、いきなりろ過しようとすると大変です。高分子凝集剤を入れると細かな浮遊物が集合して大きな粒子となるため、簡単に沈んで上澄みとスラッジに分離します。
 上澄みだけ汲み上げ、残ったスラッジは脱水して処理業者に引き渡します。

④ 中性に戻す
 スラッジを絞った排水と汲み上げた上澄みは、pH9以上のアルカリ性です。排水基準を満たすため、酸によってpH6~8に中和します。

⑤ ろ過
 最後にろ過して処理は完了です。

【異常の監視】

 めっき業者は①~④の反応に異常がないか、ORP計やpH計で監視しています。また、実際に放出される排水にクロムが含まれていないか、パックテスト等での確認も行っています。
 めっき業者だけでなく、公の団体による監視も行われています。各自治体の持つ環境関連団体が、排水設備や放流水に異常がないか定期的に検査を行っています。加えて、上水道でも水質検査が行われています。

図1 めっき廃液処理の概略図(実際の設備とは異なる)