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コラム

Column

金属の硬さについて①

金属の硬さは何で決まるのでしょうか?金属に圧子のようなもので外力を加え、変形しやすい金属が軟らかい金属、変形しにくい金属が硬い金属と言えます。金属が塑性変形しやすいかどうかを左右する因子としては、次の2つが挙げられます。

1.結晶構造  2.格子欠陥

ここでは、まず結晶構造についてお話します。
結晶構造が判明している金属は約80種で、その内70種が以下に示す3つの結晶構造のいずれかに属しています。

次に、代表的な金属の結晶構造を表にまとめました。

この表を見て、この3種類の結晶構造の中で塑性変形しやすいものはどれか分かりますか?

そうです!面心立方格子です!

では、面心立方格子が塑性変形を起こしやすいのは何故でしょうか?
金属の原子は3次元的に規則正しく整列していますが、塑性変形が起こる時は原子1つ1つが無秩序に動くのではなく面でずれが生じて変形します。
それぞれの結晶構造は、すべり面と呼ばれる塑性変形が発生する結晶面を持っています。
体心立方格子には48個、面心立方格子には12個、六方最密構造には3個のすべり面があります。
下の図は、面心立方格子のすべり面(111)です。

すべり面の数で言うと、体心立方格子が最も多く変形しやすいのかと思いきや、もう一つ考慮しなければならないのが原子が最密充填構造か否かです。
原子が密に存在するということは、原子のずれる距離が短く、小さなエネルギーで済むからです。
体心立方格子は最密充填構造ではないため、塑性変形するためには大きな応力が必要となります。

従って、最密充填構造とすべり面の数から面心立方格子に属する金属が塑性変形しやすい、言い換えると軟らかい金属の傾向があるということです。
また、格子欠陥については来月以降のコラムでお話いたします。