硬質クロムめっきの処理において、環境負荷物質(規制)への対応を問われた場合、まずRoHS指令について答えなければなりません。ここでは、RoHS指令で規制されている物質と硬質クロムめっきとの関連をお話します。
RoHS指令とは、電気・電子製品における特定有害物質の使用制限をまとめたEUの法律です。当初、6物質に対してRoHS1が交付され、その後RoHS2で4物質を追加し、現在10物質に対して使用制限がかかっています。
RoHS指令で制限がかかっている10物質を表1にまとめています。そこには、クロムめっきの生産で使用する6価クロムと鉛が入っています。
RoHS指令は、製品への有害物質の含有量に対する規制です。クロムめっき皮膜は、6価クロムが還元され0価の金属クロムの状態になっているのでステンレスなどのクロム含有合金と同等で、RoHS規制上は問題ありません。時々、RoHS指令の規制にかかる6価クロメート皮膜と硬質クロムめっきとを混同していらっしゃる方がいます。6価クロメートは、化成処理であり硬質クロムめっきとは別物です。一方、鉛はめっき時の陽極として使用していますが、これもめっき皮膜には含有されません。
環境保全上、可能ならば生産工程から6価クロムや鉛を除外できればよいのですが、6価クロムからの生産に代わる硬質クロムめっき工程は実用化できていません。装飾クロムめっきに関しては、3価クロム法からの生産が可能となっていますが、硬質クロム用途においては厚めっきが難しい、皮膜が脆い、割れが大きい等で性能が劣っており、6価クロムからの生産に置き換えることはできていないです。そのため、硬質クロムめっきに関して、生産現場では6価クロムめっき法を使用せざるおえないのが現状です。
なお、めっき皮膜に6価クロムが含有されているか否かは、ジフェニルカルバジド法による溶出試験で確認できます。