これまで金属の硬さについてお話してきました。
めっき皮膜の硬さは、冶金学法を用いて製造された金属とは異なり、クロムめっきやロジウムめっきでは数倍以上の硬さを示します。
ほとんどのめっき皮膜の硬さは、溶製法のものより高くなります。これは、めっき皮膜の結晶粒子の微細化や、吸蔵水素、格子歪などに起因しています。
めっき皮膜の硬さは、浴成分、電流密度、pH、浴温などのめっき条件に影響を受けます。これらの条件を変えることによって、めっき皮膜中への不純物の量、電着応力、結晶粒径、組織構造が変わるからです。
今回は、めっきの結晶粒径についてお話します。
めっき皮膜が硬くなる理由の一つに、めっきで得られた金属の結晶粒が溶製金属のものに比べて小さいことが挙げられます。結晶粒界は転位の移動を阻害する作用があり、結晶粒を小さくして結晶粒界を増やすと転位移動が抑制されて硬くなるのです。(硬さと転位の移動についての関係は、金属の硬さについて②で説明)
めっき皮膜の強度σと結晶粒径dには、次の関係が成り立ちます。(σ0とKは定数)
めっきの成膜過程としては、次の図のように核発生→島結晶→網目を繰り返しながら成長し、結晶がぶつかり合うところで結晶粒界が生成します。
現代めっき教本p35から引用
結晶粒を小さくするためのめっき条件は、①電流密度を高くする②濃度分極を小さくする③添加剤を加えて核の成長を抑える④金属イオンを錯体として過電圧を増加させて核生成速度を高めるなどがあります。
次回以降で、めっき皮膜に取り込まれる不純物が硬さに与える影響についてお話します。